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東京高等裁判所 平成8年(行コ)36号 判決

東京都町田市つくし野二丁目一六番地二

控訴人

小岸和澄

鳥取県八頭郡郡家町大字郡家二三四番地

控訴人

小岸和明

右控訴人ら二名訴訟代理人弁護士

古川景一

東京都世田谷区松原六丁目一三番一〇号

被控訴人

北沢税務署長 天野英四郎

右指定代理人

竹村彰

堀久司

河村康之

峰岡睦久

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は、控訴人らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人小岸和澄の平成三年五月二五日相続開始に係る相続税についてした次の処分を取り消す。

(一) 平成五年一二月二七日付け更正のうち、課税価格三四四万六〇〇〇円、納付すべき税額四四〇万一八〇〇円を超える部分

(二) 平成五年一二月二七日付け過小申告加算税賦課決定(ただし、平成七年一月二七日付け決定により減額された後のもの)

(三) 平成七年一月二七日付け過小申告加算税額の変更賦課決定(変更後の税額六二一万九〇〇〇円)

3  被控訴人が控訴人小岸和明の平成三年五月二五日相続開始に係る相続税についてした次の処分を取り消す。

(一) 平成五年六月七日付け更正(ただし、平成五年九月二九日付け異議決定により一部取り消された後のもの)のうち、納付すべき税額一一九〇万一一〇〇円を超える部分

(二) 平成五年一二月二七日付け過小申告加算税変更賦課決定

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一項と同旨

第二当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり当審における双方の主張を加えるほかは、原判決「第二 当事者の主張」(原判決書四頁六行目から二〇頁八行目まで)と同一であるから、これを引用する。

(控訴人ら)

1  本件宅地が居住用建物の敷地として使用されることが外形的・客観的に明らかになっている状態であったことについて

被相続人亡三男と控訴人和澄は、平成三年四月二六日に、本件宅地(町田市つくし野所在)を取得し、五月六日に住友林業に建築申込金を支払っているが、既にその前の四月二一日に、住友林業からは、亡三男が本件宅地を購入のうえ建物を建築することを予定した「配置図・案内図」、「敷地図」、「建物配置図」(縮尺百分の一)が控訴人和澄に交付されていた。そして、五月六日の建築工事申込のすぐ後の同月一〇日、敷地調査が実施された(この敷地調査の際には、地盤調査も行われ、スエーデン式サウンディング試験機を用いて土の貫入抵抗の測定がなされ、二・七五メートルの深さまで貫入させて調査がなされた(甲第三二号証)。住友林業は、五月一六日、前記敷地及び地盤調査についての報告書を作成、交付し、建物建築上の障害がないことを確認した。そして、五月二一日には仮契約金等として二〇六万円(印紙代二万円を含む。)が支払われ、同月二三日には、本件建物の工事請負契約が締結された。なお、工事請負契約書に添付された「仕上・仕様書NO1」では、共用室と個室が区別され、亡三男が一階の和室Aを使用し、控訴人和澄の家族と同居する予定であることが明らかとなっており、同じく添付された「仕上・仕様書NO2」では、給排水・衛生設備の項に「浴槽L型壁付手摺」の記載があるが、老人が風呂に入るときに転ばないようにするための施設であり、これによっても同居予定であることは明らかであった。なお、右工事請負契約にあたり、まだ五〇分の一の図面は作成されていなかったが、住友林業においては、五〇分の一の図面を作成せずに契約締結をすることは、内部稟議の際の「契約図書状況」の「C類型」として定型的に扱われていたものであって(乙第六号証本文五枚目参照)、通常の契約締結様式である。そして、右にみたように、一〇〇分の一の図面ではあっても、亡三男と控訴人和澄が同居することを予定して、和室Aに仏壇置場を備えたり、風呂に手摺を設けたりするなどの個別事情を考慮した手が加わっており、「標準仕様」と言い切ることはできない。

このように、住友林業の側では、四月二一日の段階で、図面の製作を一部行い、建築申込金が支払われると直ちに詳細な調査を行ない、地盤の性状や強度を確認する調査も行ない、家族構成等を具体的に考慮した一〇〇分の一の図面や仕様書も作成し、五月二三日には正式の請負契約締結にこぎ着けており、控訴人和澄も住友林業も亡三男が退院して戻ってくるための家を一刻も早く造るべく全力を傾けていた。このような敷地調査報告書や地盤調査報告書が存在する事実、また住友林業の部内基準に則って正式な請負契約が締結されている事実、これらを含めて建物建築のための作業が無理なくしかも迅速に進められていた事実、及びこの契約書に基づいて現実に住宅が建築されている事実に照らせば、亡三男の死亡の時点において、「当該土地が居住用建物の敷地として使用されることが外形的・客観的に明らかになっている状態」であったことは明らかであるというべきである。

2  仮に、当該土地上において現実に居住用建物の建築工事が着工されていなければ、「当該土地が居住用建物の敷地として使用されることが外形的・客観的に明らかになっている状態)とはいえないとしても、前記のとおり、平成三年五月一〇日に、地盤調査のために、本件宅地の深さ二・七五メートルまでの貫入試験が実施された時点において、建築工事が着工されたというべきである。なぜなら、地盤の強度調査は、住宅建築のために必要な準備調査であり、土地そのものに手を加える作業であって、広義の「建築工事」ということも可能であるからである。

3  本件特例に関する法六七条の三第一項は、当該土地の用途が居住用であり、居住用建物の敷地として用いられることが確定的に認定される場合には、必ずしも建物の敷地として用いられていない状態であっても、「構築物」の敷地として用いられていれば適用があると解される。本件宅地には、〈1〉本件宅地と外周の公道との落差のある部分につき設けられた牆壁、〈2〉敷地内に設置された上水道の給水管と量水器、〈3〉下水管と下水用マス、〈4〉敷地内に敷設されたガス管の引込管、〈5〉敷地内に設置された雨水処理用のU字溝とマス、〈6〉本件宅地内の駐車スペースと建物敷地用地との落差を解消するための階段等が設置されていた。このように、本件宅地におは、相続開始時点で「居住の用」に必要な構築物が存在し、本件宅地はその構築物の敷地の用に供せられていためであるから、本件特例の適用要件を満たしている。

(被控訴人)

1  控訴人ら主張の1は、争う。

(一) 相続税の課税対象となる財産は、相続開始時点における被相続人の財産であり、右課税対象となる財産についての課税価格の計算は、相続税法二二条が、「この章で特別の定のあるものを除く外、相続、遺贈又は贈与に因り取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による」と規定しているとおり、当該財産の取得の時(すなわち、相続開始の時)における時価によるべきこととなり、右時価の算定については、課税時期(すなわち、相続開始の時)における財産の現況に応じて評価された価額であると取り扱われている(平成五年六月二三改正前のもの)第1章総則(評価の原則)1(2)時価の意義、乙第一〇号証)。

(二) 本件特例は、事業又は居住の用に供されていた小規模な宅地等について、一般にそれが相続人などの生活基盤の維持のために欠くことのできないものであって、相続人において事業または居住の用を廃してこれを処分することに相当の制約があるのが通常であることから、相続税の課税上特別の配慮を加えることとしたものである。

本件特例が適用される典型的場面は、相続開始時において当該土地を敷地とする建物が現に存在しこれを居住用として使用している場合であるが、建物の建築にはある程度の期間が必要であり、居住用建物の建築途中で偶然に土地所有者につき相続が開始することもあり得ることを考慮すると、相続開始時、未だ建物が完成していないとしても、その土地上で既に居住用建物の建築工事が行われており、居住用建物の敷地としての土地の使用が具体化ないし現実化しているとみることができるような場合についてまで本件特例の適用を否定することは妥当ではない。そこで、本件通達は、相続開始の時点において、居住用建物が建築中であって、当該建物を相続した者が相続税の申告書の提出期限までに当該建物を居住の用に供しているとき、あるいは当該建物の完成後すみやかに居住の用に供することが確実であると認められるときは、その敷地を居住用宅地に当たるものとして取り扱うものとしている。

しかしながら、建築中の建物の敷地を居住用宅地として扱うのは、居住用建物が建築中であることにより、当該土地について、既に居住用建物の敷地としての使用が具体化ないし現実化していると同視できることによるものであるから、そのためには、相続開始の時点で、当該土地上において現実に居住用建物の建築工事が着手され、当該土地が居住用建物の敷地として使用されることが外形的、客観的に明らかになっている状態にあることを必要とすると解すべきである。

(三) ところが、控訴人らの例の場合には、亡三男と住友林業との請負契約の締結は相続開始(平成三年五月二五日)前の五月二三日に行われていたとはいえ、建築工事に着工したのは平成三年八月一一日のことであり、相続開始の直前は本件宅地は更地の状態であった。そして、相続税の申告期限(平成三年一一月二五日)後に同建物の引渡しを受け(平成四年二月一三日)、相続人が居住するに至った(同月二七日)ものであるが、このようなケースにまで本件特例を拡張して適用することはできない。

すなわち、右のケースにまで本件特例を適用することができるとした場合には、相続開始後の状況に基づいて本件特例の適用要件を具備しているか否かを判断することになるが、そのことは、相続税が相続の開始に起因し、これにより取得した財産に対して課税され、その課税価格は相続開始時点の現況に基づいて算定されるという前記原則と相容れないものである。

また、右のような場合に本件特例を拡張して適用することは、相続開始後に相続人の意思に基づき相続税の申告期限までに建物を建築し居住することによって、相続人自身が相続税の額を自由に変更し得ることを容認することになるが、そのような恣意的な運用は、もとより相続税法が予定しているところではない。

また、右のようなことを容認すれば、更地に漠然とした建築計画を有していたに過ぎないにもかかわらず、相続開始から申告期限までのタイム・ラグを利用して駆け込み的に建築工事に着手して本件特例の適用を受けるといった事態を容認することになり、そのような取扱いは、相続税法が相続税の課税価格を相続開始時の現況により算定するとしていることに反するばかりか、駆け込み的に建築工事に着手して本件特例の適用を受ける者とそうでない者との間において著しい課税の不公平を招くことになる。

(四) 一般に、租税法規についてはその規定の文言を離れてみだりに拡張解釈することは租税法律主義の見地に照らして相当でないばかりか、ことに本件特例のような例外的な措置として定められた規定の解釈は、租税公平の観点からも厳格に行われなければならない。そもそも、相続は人間の生命の終焉である死亡によって開始し、被相続人はもちろん相続人も一般的にその時期を選択し得る性質のものではない。したがって、相続税の課税価格は、被相続人や相続人が租税法の適用についてどのような意思を有していたかどうか等前後の事情に関わらず、相続開始の時点の現況に基づき、一義的な統一的、画一的基準によって算出されるべきであり、そうでないとすれば、課税庁は、個々の事例において、被相続人の意思を推量したり相続人の意思を問わなければならないことになり、迅速な課税処分が阻害されるとともに、各事例における被相続人、又は相続人の内面意思に関する事柄を立証する各種証拠の採用について、必ずしも統一的に判断し難いことから、課税庁の恣意的な判断を惹起することも想定され、ひいては課税の公平が著しく損なわれることは明らかである。

2  控訴人らの主張2について

控訴人らは、本件宅地に地盤調査のためのボーリング調査等がなされていたことにより建物の建築に着手していたとの主張をするが、当該ボーリング調査は、ビル建築の場合等のそれとは規模が異なり、簡易な試験機を使用して地盤の概況を把握しようとするものであり(甲第三二号証二ページ)、当該敷地が建築予定の建物の建築に耐え得る地盤の強度を有するか否かの判断に資するために行われるものであって、建築工事の着手に先立つ準備調査にすぎないものである。したがって、このようなボーリング調査が行われたからといって、当該土地が居住用建物の敷地として使用されることが外形的、客観的に明らかになっている状態にあるとは到底いえない。

3  控訴人らの主張3について

控訴人らの主張3は争う。

本件特例が適用される前提として、法六九条の三第一項は、当該宅地が相続開始の直前において現に「(事業の用若しくは)居住の用に供されていた」ことを要件としているところ、控訴人の右主張は、右の要件を不要としている点で、そもそも失当である。

なお、控訴人らが述べる施設(〈1〉本件宅地と外周の公道との牆壁、〈2〉上水道の給水管と量水器、〈3〉下水管と下水用マス、〈4〉ガス管の引込管、〈5〉雨水処理用のU字溝とマス、〈6〉本件宅地内の駐車スペースと建物敷地用地との間の階段等の各種施設)は、宅地分譲業者が宅地造成過程において設置したものであり、同種の分譲用宅地に関しても通常敷設されている性格のものであるから、これら施設の存在をもって「建物の建築中」とみなし得ないことは当然である。

第三証拠

証拠関係は、原審及び当審訴訟記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第一課税処分の経緯について

請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

第二本件各更正の適法性について

当裁判所も、本件各更正はいずれも適法であると判断する。その理由は、次の一のとおり原判決を訂正付加し、二のとおり当審における控訴人らの主張についての判断を加えるほかは、原判決書二一頁四行目から三五頁五行目までと同一であるから、これを引用する。

一  原判決に対する訂正付加

1  原判決書二一頁一〇行目の「第八号証、」の次に「第一一号証、」を加え、同二三頁五儀目の「『瞳』という銘柄」を「『憧』という銘柄」に改め、同一〇行目の「本件建物の建築確認の申請」の前に「控訴人和澄及びその妻有紀子の名で」を加え、同二四頁一行目の「更地であり」を「住宅建設用地として造成、整地していたもののいまだ更地の状態であり」に改める。

2  原判決書三〇頁八行目「明らかである。」の次に、改行して、次を加える。「たしかに、本件において、亡三男は、前記経緯により平成三年四月二六日に旧自宅敷地を売却し、同日、いわばその買換えとして本件宅地を購入したものであり、控訴人和澄らはその前後からその地上に亡三男と控訴人和澄家族との二世帯住宅を建てるべく住友林業と相談を遂げ、同年五月二三日に住友林業との間では本件建物の建築契約を締結し、間もなく着工予定であったのに五月二五日に亡三男が死亡し、本件宅地は相続開始時点ではいまだ更地であったため法六九条の三第一項の本件特例の適用を受けられない結果となることは、控訴人らにとって不運が重なったというほかはない。

しかしながら、相続税の課税対象となる財産の価額は、当該財産の取得の時における時価によるのであり(相続税法二二条)、その時価とは課税時期(すなわち、相続開始の時)における財産の現況に応じて評価された価額であると解せられる(前記財産評価基本通達第1章総則(評価の原則)1(2)時価の意義、乙第一〇号証)、そして、相続税法及び租税特別措置法等租税法規の適用は、租税法律主義の原則及び課税の公平の原則並びに迅速な課税処理という徴税技術上の観点から、相続開始の前後の事情を問わず、相続開始時の現況に基づき一義的な統一的、画一的な基準によって判断されるべきところ、本件のようなケースにまで本件特例を適用することになれば、結局相続開始時においては更地であったにもかかわらず、相続開始後に建築工事に着手した場合にまで本件特例の適用が拡張されることになり、仮に当該土地上に居住用建物を建築する予定があったとしても(そして、その着工予定時期等が相続開始時と近接していて右建築計画がいかに具体的で確実なものであったにしても)、相続税法が相続税の課税価格を相続開始時の現況により算定するとしている趣旨に反することになるのであって、前記のような一義的で、かつ統一的、画一的な租税法規の適用の必要の観点からしても、そのような特例の適用の拡張は相当でなく、控訴人らが本件特例の適用を受けられないこともやむを得ない。」

二  当審における控訴人らの主張について

1  当審における控訴人らの主張1について

当裁判所も控訴人ら主張のような敷地調査や地盤調査が行われ、その関係の報告書が存在し、請負契約が締結され、建物建築のための作業が無理なく迅速に進められていた事実を考慮しても、当該土地が居住用建物の敷地として使用されることが外形的、客観的に明らかになっている状態にあったとはいえないものと判断する。その理由は原判決書二五頁七行目から三〇頁九行目まで(本判決で同頁八行目の次に付加したものを含む。)の説示と同一であるからこれを引用する。

2  当審における控訴人らの主張2について

控訴人らは、本件宅地にボーリング調査等による地盤調査がなされていたことにより建物建築工事の着手があったとの主張をする。しかし、前掲甲第一一号証及び成立に争いのない甲第三二号証によれば、右ボーリング調査は、建築請負契約締結前である平成三年五月一〇日に住友林業による敷地調査、地盤調査の一環として行われるもので、スウェーデン式サウンディング試験機と呼ばれる簡易な試験機を使用して本件宅地内の三か所について深さ〇・七五メートルないし二・七五メートルまで一〇〇キログラムの重りによる載荷試験を行ったものであるが、右地盤調査は、ビル建築の場合等のそれとは規模が異なり、本件宅地が建築予定の建物の建築に耐え得る地盤強度を有するか否か地盤の概況を把握するためのものであって、右ボーリング調査を含めて建築工事の着手に先立つ準備調査と呼ぶべき程度のものであることが認められる。したがって、このような地盤調査が本件相続開始前の五月一〇日の段階で行われていたとしても、建物の基礎工事に着手したとはいえず、本件土地が居住用建物の敷地として使用されることが外形的、客観的に明らかになっている状態にあったとは到底いえない。したがって、この点の控訴人らの主張は理由がない。

3  控訴人らの主張3について

控訴人らは、本件特例に関する法六九条の三第一項の適用に当たっては、当該土地の用途が居住用であり、居住用建物の敷地として用いられることが確定的に認定される場合には必ずしも建物の敷地として用いられていない状態であっても「構築物」の敷地として用いられていればよいと解すべきことを前提に、本件宅地には〈1〉本件宅地と外周の公道との牆壁、〈2〉上水道の給水管と量水器、〈3〉下水管と下水用マス、〈4〉ガス管の引込管、〈5〉雨水処理用のU字溝とマス、〈6〉本件宅地内の駐車スペースと建物敷地用地との間の階段等の各種施設(構築物)が設置されていて、構築物の敷地とされているということがいえるから、本件特例の適用がなされるべきであるとの主張をする。

しかしながら、控訴人和澄本人尋問の結果(原審)により成立の真正が認められる甲第九号証の二及び前掲同第一一号証によれば、これらの設備等は、本件宅地の宅地分譲業者が宅地造成過程において設置したものであり、構築物として独立の効用を有するものでもなく、同種の分譲用宅地に関しても一般に敷設されていることの多い性格のものであるから、これら施設の存在をもって本件宅地が本件特例の適用の対象となる「構築物の敷地」となっているとみることは困難である。また、これらの設備等が本件宅地購入時に既に設置されていたことをもって建物の建築中であったとみることもできないことはいうまでもない。したがって、この点の控訴人らの主張も採用することはできない。

第三過小申告加算税賦課決定の適法性について

当裁判所も、本件各過小申告加算税賦課決定は、いずれも適法であると判断する。その理由は、原判決書三五頁七行目から三六頁三行目までと同一であるから、これを引用する。

第四結論

そうすると、本件控訴はいずれも理由がないので、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 荒井史男 裁判官 田村洋三 裁判官 豊田建夫)

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